賃貸アパートの不動産会社は高齢者との契約をどう考えている?

住まいの選び方

高齢になってから賃貸アパートへの入居を希望しても、年齢や収入を理由に断られるのではないかと不安になることがあります。

将来的に賃貸アパートに住みたいとお考えならば、管理会社である不動産会社が高齢者との契約をどう考えているかについて知るのがおすすめです。

そこで今回は、不動産に関する政策提言や研究、無料相談などをおこなっている「公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会」および「公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会」が公表しているガイドブックを読み解きます。

高齢者の賃貸住宅への入居支援ガイドブックとは

益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会および公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会(以下、全宅連・全宅保証)は、賃貸物件の管理会社である不動産会社といった宅建業者・管理業者に向けて「高齢者の賃貸住宅への入居支援ガイドブック」を公開しています。

(出典 https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/themes/zentaku2020/assets/pdf/research/estate/research_project/archive2020/R02_guidebook.pdf

ガイドブックの内容①高齢者の問題とは

このガイドブックは、超高齢社会の到来に備えて、仲介業務・管理業務をどのようにとりおこなうかを具体的にまとめたものです。

ガイドブックの冒頭には、3人に1人が高齢者になる超高齢社会のなかでも、単身高齢者人口の増加を都市部の問題と位置づけています。

また、賃貸物件における高齢者問題について、保証人・孤独死・認知能力の低下などを挙げています。

さらに、高齢者の受け入れだけでなく、現在の入居者がいずれ高齢者になることも今後の問題としていることがポイントです。

ガイドブックの内容②高齢者の受け入れをビジネスととらえる

全宅連・全宅保証のガイドブックでは、高齢者の賃貸物件入居受け入れについて、リスクだけでなくビジネス上のチャンスがあるとしています。

その理由として、高齢者は顧客層として規模が大きく、先行開拓には大きなメリットがあるためです。

また、高齢者の約半数は保証人を用意でき、長期にわたり入居し続けてくれることも、高齢の入居者受け入れにメリットがあると見なされる理由です。

高齢の入居者の場合、保証人・孤独理・認知能力の低下といった特有のリスクの管理を解決できれば、優良顧客になることが期待できるとしています。

入居者側から考えると、こうした高齢者の受け入れをビジネスととらえることは、入居できる賃貸物件の増加といったメリットにつながります。

不動産会社の対応①受付・物件確認

高齢だけど、門前払いされないか不安だわ

実際に、どのようなことに注意して受付・物件確認をしているか見てみるワン!

基本的なポイント

年齢は、入居者の特徴を知るための大切な情報です。

しかし、年齢だけで入居者のリスクを判断するのではなく、個人の特徴を判断することが不動産会社に求められる対応です。

所有している賃貸物件の入居者を募集している大家さんから管理業務を委託された不動産会社は、高齢の入居希望者に対してさまざまな情報をヒアリングします。

大家さんは高齢というだけで入居を断る傾向がありますが、このハードルを乗り越えるサポートをしてくれるのが、大家さんから委託を受けて入居者を探している不動産会社です。

賃貸物件に入居を希望する高齢者が来店した場合、不動産会社はさまざまな項目についてヒアリングをおこないます。

高齢者に対するヒアリング項目①引っ越し理由

引っ越しの理由を聞き取るのは、健康状態や家族の事情などを把握するためです。

もちろん、不動産会社は、プライバシーの保護は配慮する必要がありますので、無理に言いたくないことを言う必要はありません。

現在の住まいから転居しようと思った理由について、段差が負担になる・配偶者が亡くなり一人暮らしのための部屋を探しているなど、問題のない範囲で自分の状況を伝えると良いでしょう。

高齢者に対するヒアリング項目②健康状態

入居者を受け入れる不動産会社にとって、入居者の健康状態は大切な情報です。

不動産会社は、高齢者だからといって身体が不自由だと判断せず、個々の暮らしぶりをヒアリングし、その方の健康状態を把握しています。

具体的には、駅から歩いてきたのか・車の運転をするのかといった日常的な移動手段についてヒアリングがおこなわれるのが一般的です。

また、定期的に通っている病院があるのかについて聞かれた場合、さしつかえなければ病名を伝えると良いでしょう。

高齢者に対するヒアリング項目③収入状況

賃貸物件の契約を結ぶうえで避けられないのが、入居希望者の収入についての情報収集です。

高齢者の場合であれば、どのような収入から家賃を支払う予定なのかを伝えます。

具体的には、年金・預貯金・子どもからの仕送りなどが、家賃の収入源となります。

また、生活保護の家賃扶助がある場合は、先に伝えておくと手続きがスムーズに進みます。

不動産会社によっては、年金額を推測するために、年金受給前の職種についてヒアリングすることがありますので、さしつかえない範囲で答えるのがおすすめです。

高齢者に対するヒアリング項目④家族

高齢者が賃貸物件の契約を結ぶ前には、近くに家族が住んでいるかについてヒアリングがおこなわれます。

また、家族だけでなく、友人が近くにいるか・趣味や習い事など人とのつながりがあるかについて聞かれることがあります。

家族・友人などについて不動産会社がヒアリングするのは、孤独死へのつながりやすさを確認するためです。

定期的に交流する家族・友人がいれば、高齢であってもいきいきとした生活を送れると判断されるでしょう。

対応事例

全宅連・全宅保証のガイドブックでは、受付から申し込みのプロセスにおいて、いくつかの対応事例が掲載されています。

  • 近親者が近くにいる方のみを受け入れていて、設備故障や病気の際には、すべて近親者に対応してもらった
  • バリアフリー用の手すりを付けた
  • 賃料が安い部屋でも福祉サービスと組み合わせて、高齢者が住みやすい部屋にできた
  • 入居条件として、週に1~2回は親族が様子を見にくることを約束してもらった

不動産会社の対応②申し込み・入居審査

高齢者にとって、入居審査が大きなハードルよね

不動産会社が何を重視しているかチェックだワン!

基本的なポイント

高齢者の場合、不動産会社は丁寧な面談をおこなうことが基本となります。

不動産会社は、高齢者から入居の申し込みを受けた場合、年齢だけでその方を判断するのではなく、面談をとおして人柄・人間関係を把握することがポイントです。

入居の申し込みの段階では、緊急時の連絡先を含め、必要な情報がヒアリングされます。

また、入居申し込み・入居審査の段階で大切なポイントが、連帯保証人の確保です。

家賃保証会社を利用すれば連帯保証人の問題はクリアできると思われるかもしれませんが、高齢者の場合には家賃滞納だけでなく緊急時に駆けつけてくれる家族や親族の存在が大切になります。

連帯保証人がいない場合は?

すぐに駆けつけてもらえるくらい近くに親族がいない場合、趣味のサークルや常連となっているお店など、親しい方を緊急の連絡先として指定できないか考えてみましょう。

賃貸物件によっては、家賃滞納時に支払いを肩代わりする連帯保証人ではなく、緊急連絡先のみで申し込めるところがあります。

また、緊急連絡先に指定できる友人がいない場合は、有償で緊急連絡先を代行するNPO法人などを利用できるか相談してみるのがおすすめです。

連帯保証人が遠方に住んでいる場合

一般的な賃貸物件では、すぐに連帯保証人が遠方に住んでいる場合、審査にとおらないことがあります。

これは、万が一緊急で対応が必要になった場合、遠方に住んでいるとすぐに対応してもらえないリスクがあるためです。

家族と離れて暮らしているなど、近くに住む連帯保証人がいないならば、家賃保証会社を利用するほか、家賃の増額で対応してもらえることがあります。

一般財団法人 高齢者住宅財団の家賃債務保証

住宅の確保に配慮が必要な方について、連帯保証人の役割を担えるのが一般財団法人 高齢者住宅財団です。

利用対象となるのは、60歳以上の高齢者世帯・障がい者世帯・子育て世帯・外国人世帯などです。

補償されるのは、滞納した家賃12か月分・家賃9か月分相当の退去時の原状回復費用となります。

ただし、一般財団法人 高齢者住宅財団の保証制度を利用できるのは、財団と基本約定を結んでいる賃貸物件のみとなることが注意点です。

入居申し込みで聞かれることは?

  • タバコ・飲酒の有無
  • 服用している薬
  • 連帯保証人
  • 緊急連絡先
  • かかりつけ医
  • 後見人など財産の管理者
  • サポートを受けている関係行政機関
  • 利用している介護施設
  • 見守り体制がある場合のスケジュール

不動産会社の対応③賃貸借契約

難しい契約内容…スムーズにいくか心配だわ

家族にサポートをお願いするのもおすすめワン!

基本的なポイント

高齢者が入居者となる賃貸借契約では、その場所で人生をまっとうすることを前提とした契約内容を考えることがポイントです。

入居者に万が一のことがあった場合、事前にヒアリングしている緊急連絡先や連帯保証人などに連絡をとりますが、賃貸借契約前には実際に連絡をとれるか確認することがあります。

この連絡確認において、健康や収入などの個人情報については、より厳格な取り扱いが不動産会社に求められます。

また、高齢者が入居する場合は、さまざまな問題が発生することが予想されますので、対処できることを契約書内容に盛り込むのが一般的です。

ケースによっては、契約方法を工夫する・高齢者向けの制度やサービスを紹介するなど、より住みやすさに配慮されることがあります。

さらに、緊急時にどのような対応をおこなうかについて、あらかじめルールを決めておくことも大切なポイントです。

入院・認知症・死亡など、万が一に備えて、さまざまなことを決めておきます。

室内に残された家財道具の撤去や保管をどうするか、連帯保証人・緊急連絡先に電話をすることについて問題ないかなど、賃貸借契約前に確認がおこなわれます。

契約書に盛り込む対応例

  • 自分で電話ができる場合には、救急車を呼んでもらう
  • 室内から応答がない場合は、警察の立ち会いのもとで管理会社が室内に入る
  • 長期間留守にする場合には、前もって管理会社・大家さんへ伝える
  • 連帯保証人・かかりつけ医など、変更があった場合には情報提供をしてもらう
  • 成年後見制度を利用する場合は、1か月以内に後見人から申し出を受ける
  • 個人情報を地域の民生委員に伝えることについて了承を得る

不動産会社の対応④入居中のトラブル

高齢になると、気付かないうちに迷惑をかけちゃう…

入居者・不動産会社が協力することが大切ワン!

孤独死の防止・認知症の対策は早期発見が重要

室内で亡くなったまま長期間放置されてしまうことを、孤独死とよびます。

孤独死に至る前には、健康状態の悪化・経済的な困窮といった状況の変化が見られることがあります。

したがって、孤独死を防止するには、高齢者の異変や変化を早期発見できるような仕組み作りが重要です。

高齢者の見守りには、不動産管理会社だけでなく、地域包括支援センタ―・社会福祉協議会・司法書士などの専門家によるネットワーク体制構築が欠かせません。

実際の見守り体制には、自治体が導入する緊急通報装置の設置・配食サービスの利用などが挙げられます。

また、民間の警備会社・郵便局員・新聞配達員による見守りも有効な対策です。

さらに、電気・ガス・水道などの利用状況から活動を把握したり、トイレなどにセンサーを設置し動きを把握したりすることも有効な対策といえます。

実際の対応例

  • 福祉サービスが必要になった場合は、地域包括支援センター・社会福祉協議会に相談する
  • 心身の健康に問題が見られる場合は、自治体の福祉窓口・相談支援事務所に相談する
  • 入院した場合は、連帯保証人・緊急連絡先と連絡を取り合う
  • 認知症になった場合は、地域包括センターに連絡し、ケアプランの作成や成年後見制度の利用などの対応を依頼する
  • 介護施設などに入所が必要になった場合は、担当のケアマネージャーや連帯保証人に対応を依頼する
  • 行方不明になった場合は、連帯保証人・緊急連絡先・警察に通報する
  • 安否が不明な場合は、緊急連絡先・警察立ち会いで室内に入る

大家さんの悩みを解決する制度

孤独死による不動産価値の低下

特殊清掃費用・遺品整理費用などを保証してくれる保険商品があります。

認知症の不安

本人・家族が適切な対応をしてくれない場合には、地域包括支援センター・自治体の介護保険窓口に相談してみましょう。

申請が困難な場合には、代行申請ができるかもしれません。

バリアフリーではない

住宅確保用配慮者向けの賃貸住宅の登録制度があります。

これは、配慮を必要とする方の入居を拒まない賃貸借契約として、自治体に登録できる精道です。

この制度の利用には、建物の規模・構造などに一定の条件がありますが、登録のための改修について支援措置があります。

異変に気づけない

自治体・民間企業が、さまざまな見守りサービスを展開しています。

直接的に訪問し健康状態を見守るサービスだけでなく、商品配達の利用など、間接的に見守りの役割を果たすサービスがあります。

家賃の滞納が心配

入居者が生活保護を受けている場合、自治体から大家さんに直接家賃を振り込む代理納付制度があります。

代理納付制度を利用できれば、入居者を経由せず家賃を受け取れることがメリットです。

ただし、自治体によっては、生活保護受給者の家賃代理納付制度をおこなっていないところがあります。

亡くなった場合の賃貸借契約

終身建物賃貸借契約は、契約者が生きているうちは契約を続け、死亡したときに契約が終了するものです。

これは、平成13年度の高齢者の住居の安定確保に関する法律に基づき、バリアフリー化された賃貸物件で適用される制度となります。

平成30年には、申請者の事務手続きの負担のために添付書類が削減されるとともに、バリアフリー基準が緩和されています。

亡くなった後の家財道具

相続人がわからない場合、亡くなった入居者の家財道具の処分に困ることがあります。

このような場合には、相続財産管理人制度が利用可能です。

相続財産管理人制度とは、相続人がわからない・全員が相続放棄をした場合などに、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任するものです。

亡くなった方に借金がある場合には清算をおこない、残った財産は国庫に帰属させることになります。

亡くなった方と特別な関係があった方については、相続財産分与がおこなわれることがあります。

まとめ

全宅連・全宅保証は、超高齢社会の到来に備えて、不動産会社の仲介・管理業務のガイドブックを公表しています。

高齢となった自分自身や家族が賃貸物件への入居をお考えならば、賃貸借契約前から実際に住み始めるまでのポイントを押さえておきましょう。

不動産会社がどのようなことをしてくれるかを知っておけば、年齢を重ねても暮らしやすい環境を整えられます。

タイトルとURLをコピーしました