高齢者が賃貸物件に住むメリットは?気になるデメリットも解説

住まいの選び方

老後の生活をイメージしたとき、気になるのが住まいの確保です。

現在、賃貸物件にお住まいの方のなかには、持ち家を購入しようか迷っている方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、老後を賃貸物件で過ごすメリットとともに、気になるデメリットを解説します。

高齢者の2割ほどが賃貸物件に住んでいる

総務省が発表した「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」によると、高齢者がいる世帯のうち81.6%が持ち家、18.2%が賃貸住まいであることがわかります。

また、高齢者のみの単身世帯では、67.5%が持ち家、32.2%が賃貸物件に住んでいるとの結果が出ました。

同調査では、高齢者同士またはどちらかが高齢者の夫婦の世帯についての調査もおこなわれていて、こちらは87.7%が持ち家、12.3%が賃貸物件との結果です。

(出典 https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf)

老後の生活を賃貸物件で送るメリット

お父さんが退職したら、社宅を出ないといけないんだけど…

持ち家ではなく、賃貸物件という選択肢があるワン!

メリット①高額な費用がかからない

老後の生活を賃貸物件で送る場合、高額な費用がかからないことがメリットです。

社宅や賃貸物件で長く暮らしていた方が、持ち家を購入する場合、手持ちの預貯金では足りないことがほとんどです。

預貯金から代金のうち10~20%ほどの頭金を捻出し、残りの大部分は銀行などで住宅ローンを借りることになります。

住宅ローンを借りると毎月返済を続けていく必要があり、場合によっては、賃貸物件の家賃より大きな出費になることがあります。

メリット②好きなタイミングで引っ越せる

老後も賃貸物件に住むと決めた場合、自分の好きなタイミングで引っ越せることがメリットです。

持ち家を所有していると、住宅ローンを完済していなければ売却ができないため、気軽な引っ越しができません。

しかし、賃貸物件暮らしであれば、ライフスタイルの変化に応じて自分に合った部屋へ引っ越せます。

20代のうちは通勤のしやすさを最優先とし、駅の近くのワンルームを選ぶ方が多くいらっしゃいます。

30代になると、結婚・出産など生活に大きな変化が生じ、子育てのしやすい公園の近くなどに賃貸物件を借りることになるでしょう。

40代・50代になり子どもが独立した後は、老後の生活を考え始め、利便性の高い駅の近く・生活のしやすいスーパーマーケットの近く・通院に便利な総合病院の近くなどの賃貸物件が好まれます。

メリット③大家さんに設備を修理してもらえる

賃貸物件に住んでいると、エアコンや給湯器などの故障について、基本的に大家さんに修理してもらえることがメリットです。

賃貸物件において、エアコン・給湯器といった設備は付帯設備とよばれ、室内の一部として貸し出されています。

したがって、入居者の落ち度や故意が認められない限りは、大家さんの負担で修理・交換をしてもらえます。

持ち家で生活していてエアコンや給湯器などが故障したら、修理や交換の費用は全額自分で支払わなければなりません。

しかし、賃貸物件であれば、こうした設備の修理費用が不要になることがメリットです。

メリット④ライフスタイルの変化に応じて間取りを選べる

子ども2人がいる夫婦が賃貸物件で暮らす場合、最低でも2LDKの間取りが必要です。

子どもが異性の場合であれば、それぞれに子ども部屋が必要となり、3LDKが必要になることがあります。

賃貸物件暮らしでは、子どもの成長に合わせて広い部屋に引っ越し、子育てを終えたタイミングでコンパクトな部屋に引っ越せることがメリットです。

持ち家で子育てをする場合、老後の生活も同じ持ち家で過ごすことになります。

場合によっては、2階への移動や広い室内の掃除に負担がかかることがあり、生活にしにくさを感じるかもしれません。

しかし、賃貸物件で老後を過ごすと決めたならば、元気なうちに老後を安心して過ごせる部屋に引っ越せます。

夫婦2人で過ごす賃貸物件としては、1LDK・2LDKなどがおすすめです。

メリット⑤家賃の安い賃貸物件を選べる

年金に頼る老後の生活では、賃貸物件の家賃が経済的な負担になります。

毎月数万円の家賃を捻出できるかが不安で、持ち家の購入を考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、賃貸物件は、上手に選べば家賃の安いところに住めることにメリットがあります。

家賃が安い賃貸物件として挙げられるのが、駅から遠い部屋・築年数の古い部屋・需要の低いエリアにある部屋などです。

また、県営住宅・市営住宅など、公営の借家であれば、予算の少ない高齢者でも比較的借りやすいでしょう。

老後の生活を賃貸物件で送るデメリット

メリットが多いなら賃貸物件も良いわね

ちょっと待って!デメリットも知っておかなきゃだワン!

デメリット①契約更新の不安がある

賃貸物件を借りる際に結ぶ契約には、普通借家契約と定期借家契約の2種類があります。

普通借家契約とは、契約者の希望に応じて契約更新を重ね、長く住み続けられるものです。

一方の定期借家契約とは、原則として契約更新ができないタイプのものです。

一般的な賃貸物件であれば、普通借家契約となるため、長く住み続けられると思われるかもしれません。

賃貸物件では入居者の権利が最大限守られるようルールが定められていますが、重大なルール違反などが認められる場合には、契約更新をしてもらえないことがあります。

契約更新をしてもらえないケースとして挙げられるのは、家賃滞納・騒音などの近隣トラブルといった迷惑行為が認められる場合です。

このほかに、長く住み続けた賃貸物件で気をつけたいのが、老朽化による建て替えを理由とする立ち退き要求です。

場合によっては、老後に足腰が弱ってから立ち退きをしなくてはならなくなりますので、築年数の古い賃貸物件を選ぶ場合には注意しましょう。

デメリット②連帯保証人が必要になる

若い頃から賃貸物件で生活をしている方であれば、賃貸借契約を結ぶ際に、連帯保証人を求められることをご存じでしょう。

また、連帯保証人が見つからない場合、家賃保証会社を利用すれば問題ないと思われる方も多いかもしれません。

実は、高齢になると、家賃保証会社だけではリスクに備えられないと判断され、入居審査に落ちることがあります。

賃貸物件に入居する場合、親などに連帯保証人を頼むか、有料で家賃保証会社を利用するのが一般的です。

連帯保証人・家賃保証会社は、入居者が家賃を支払えなくなった場合に、支払いを肩代わりする役割があります。

しかし、入居者が高齢の場合、大家さんの立場で考えると、家賃の滞納以外にさまざまなリスクがあります。

単身高齢者世帯の場合には、誰にも知られず亡くなってしまう孤独死の問題が挙げられます。

孤独死は自然死とは分けて考えられ、次の入居者に事故物件として告知する義務が発生します。

また、高齢になると、大家さんでは解決しきれない認知症の問題も発生するでしょう。

こうした高齢者ならではの問題があることから、家賃保証会社だけでは入居審査にとおらず、子どもなどの連帯保証人が必要になることがデメリットです。

デメリット③毎月の家賃支払いが困難になる

年金暮らしの高齢者世帯で問題になるのが、毎月の家賃の支払いです。

持ち家であれば、定年までに住宅ローンを完済するなどの計画を立てられますが、賃貸物件だと、そこに住んでいる限り毎月数万円の家賃が発生することがデメリットです。

家賃の支払いを滞納してしまうと、強制退去などを申し渡されることになり、住まいを失うことになりかねません。

老後の生活を賃貸物件で送る場合、老後も安定して支払える家賃の金額を考えることが大切です。

とくに、自営業を続けてきた方など厚生年金がない方の場合には、国民年金だけでは家賃・生活費をまかないきれず、貯金を切り崩す生活が予想されます。

長生きすればするほど貯金が苦しくなり、住まいの確保が難しくなるのが現実です。

安心できる老後の賃貸物件暮らしのためには、できるだけ早く資金計画を立てる必要があります。

デメリット④バリアフリー工事ができない

高齢者にとって暮らしやすい家は、段差がなく手すりなどが設置された家です。

持ち家であれば自由にバリアフリー工事ができますが、賃貸物件であれば基本的に工事が認められないことがデメリットです。

室内は原状回復ができる範囲で工夫すれば段差を減らせますが、スロープやエレベーターが完備された賃貸物件でなければ生活しにくいと感じられるかもしれません。

とくに、車椅子や歩行器の使用が欠かせなくなった場合、室内での移動は問題なくても、外出ができなくなることがあります。

公営住宅のなかには、バリアフリー化された物件がありますが、多くの場合は順番待ちなどが発生しすぐには入居できないのが一般的です。

デメリット⑤孤立しやすい

高齢者の賃貸物件で見逃せないのが、孤立しやすいことです。

賃貸物件暮らしを送る高齢者が孤立しやすいのは、同世代のご近所さんが少ないことが理由です。

高齢者の8割程度は持ち家暮らしであり、そもそも賃貸物件で暮らす高齢者の割合は少ないといえます。

持ち家暮らしであれば、同世代のご近所さんを見つけやすいですが、賃貸物件暮らしの場合には気軽におしゃべりできる方が見つからないかもしれません。

ご近所付き合いがないことは気楽で良いと感じられる一方で、高齢になると困りごとが増えることは注意点です。

自分のことを気にかけてくれるご近所さんがいれば、雨戸がずっと閉まっている・ポストに新聞が溜まっているなど、異変に気付いてくれる可能性が高まります。

まとめ

老後の生活を賃貸物件で送る場合、高額な費用が不要なことや大家さんに設備を修理してもらえることなどがメリットです。

ただし、契約更新の不安があることや連帯保証人が必要になることは、賃貸物件暮らしのデメリットといえます。

老後に安心できる賃貸物件暮らしを送るには、長く家賃を支払えるかどうかなど、早めの資金計画づくりがポイントです。

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