高齢者が暮らしやすい間取りは?平屋・2階建てのメリット・デメリットを解説

住まいの選び方

年齢を重ねると、現在の住宅が暮らしにくいと感じることがあります。

老後の生活を快適に送るには、住み替えや間取り変更のリノベーションがおすすめです。

そこで今回は、高齢者が暮らしやすい間取りとはどのようなものかを考えるとともに、平屋・2階建てそれぞれのメリット・デメリットを解説します。

高齢者が暮らしやすい間取りの条件

今の家が暮らしにくく感じるけど、どのような間取りが良いかなんて見当もつかないわ

暮らしやすさにつながる条件をいくつかご紹介するワン!

実際にどのような間取りで生活している?

2012年の岐阜大学家政学部紀要のなかに「在宅要支援高齢者の住まい方からみた間取りのあり方」という調査があります。

この調査は、高齢化が急速に進む現在において、介護サービスを受けながら自宅で暮らしたいと考える高齢者が、どのような間取りで暮らしているかを調査したものです。

この調査では「寝室」と「居間・食堂などの居場所」の位置関係を4つに分類し、後期高齢者にとって暮らしやすい間取りを提案しています。

  • タイプ①異なる階に寝室・居場所がある(7例)
  • タイプ②同じ階に分離して寝室・居場所がある(20例)
  • タイプ③寝室・居場所が隣り合っている(36例)
  • タイプ④居場所が寝室と化している(7例)

この研究では、実際に暮らしている高齢者にとってタイプ④の居場所と寝室が同一化している間取りの利便性の高さをある程度認めています。

食事をしてすぐに横になれる・体力が落ちて来ているが移動せずに済むなどが、このタイプの間取りで暮らす理由です。

しかし、居場所と寝室の同一化は、食寝分離の原則から見ると多くの問題があると指摘されています。

具体的には、保健衛生・来客時にプライバシーを確保できないなど、高齢者のQOL向上につながらないことが問題です。

したがって、研究の結論として高齢者におすすめできるのは、タイプ③の寝室・居場所が隣り合っている間取りとされています。

(出典 「岐阜女子大学紀要」第41号 https://gijodai.jp/library/file/kiyo2012/15.pdf

面倒だけど、食事をとる部屋でそのまま寝る習慣は良くないのね

後期高齢者になると、家のなかの移動にも身体的な負担が大きいワン!

高齢者が住みやすい家の特徴アンケート結果

持ち家に住んでいる10代から50代以上の方を対象とした民間のアンケートによると、高齢者が住みやすい家の特徴は、以下のとおりです。

(出典 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000132.000055654.html

  • 1位 バリアフリー化されている
  • 2位 ワンフロアで生活できる
  • 3位 使いやすい導線
  • 4位 高断熱で室温が快適
  • 5位 コンパクトな間取り
  • 6位 メンテナンスしやすい
  • 7位 住宅設備が充実
  • 8位 水回りが広い
  • 9位 廊下が広い
  • 10位 エレベーターがある

具体例
  • ゆるやかな階段
  • 玄関のスロープ
  • すべりにくい風呂場の床
  • 平屋やマンションなどワンフロアの住宅
  • 寝室とトイレが近い
  • 冬でも暖かい
  • 庭に雑草が生えない
  • 車椅子でトイレに入れるくらいの広さがある
  • 車椅子で移動できる幅のある廊下
現在の家の不安な部分
  • マンションの高層階で災害時・点検中のエレベーター使用ができない
  • 古い家で段差が多い
  • 土地が狭く3階建て
  • 水回りが狭くて介助しにくい

膝が痛くて、2階に上がる階段が大変なの

平屋・マンションなどワンフロアの間取りがおすすめワン!

老後を平屋で暮らす場合のメリット・デメリット

老後の暮らしに合った間取りとしてまず挙げられるのが、一戸建ての平屋です。

メリットしかないと思われるかもしれませんが、いくつか注意したいデメリットがあります。

平屋のメリット①階段を使わずに暮らせる

平屋に住む最大のメリットは、室内の移動に階段を使わずに済むことです。

高齢になると膝・腰などに痛みが出やすく、階段の昇り降りが苦痛に感じられることは珍しくありません。

2階建ての一戸建てに住む場合、朝起きてから雨戸を開ける・洗濯物を干す・洗濯物の取り込み・雨戸を閉めるなど、さまざまな場面で階段を使用します。

年齢とともにこうした行動ができなくなり、雨戸を閉めっぱなしまたは開けっ放しにしたり、洗濯物は1階で室内干しにしたりする方が増えます。

毎日窓の開け閉めとともに換気がおこなわれますが、雨戸の開け閉めをしない生活が始まると、2階部分に湿気が溜まりカビが発生しやすくなるかもしれません。

また、雨戸を閉めていないと夜間に防犯面で不安が生まれることがあります。

老後の生活の場として平屋を選べば、1階のみで暮らせるため、2階へ上がる必要はありません。

平屋のメリット②家族との距離が近い

平屋は1階のみが生活空間となることから、家族同士の距離が近いことがメリットです。

2階建ての住宅の場合、1階で食事をした後は、2階の個室に入り様子がわからなくなることがあります。

しかし、平屋であれば、食事時間・リラックスタイム・睡眠時間すべてを1階で済ませるため、家族同士で何をしているか把握しやすいでしょう。

高齢になると1人では不安になることがありますが、平屋であれば近くに家族がいるという安心感が生まれます。

平屋のデメリット①浸水のリスクがある

豪雨・台風などの災害が発生した場合、室内に水が流れ込むことがあります。

平屋で暮らしていると、浸水ですべての家財道具に被害が発生することがデメリットです。

2階建てであれば、大切な家財道具を2階部分に運び込み、浸水被害を回避できます。

しかし、平屋はもともと1階しかない間取りですので、浸水が始まってもテーブルの上に乗せるくらいしか対応ができません。

また、平屋は、垂直避難ができないことも大きなデメリットです。

事前に大雨情報を把握していれば、近くの避難所に身を寄せられます。

しかし、高齢になると自分で情報を把握しにくくなり、気がついたら浸水が始まっていたということも考えられます。

避難所へ行けない場合には自宅の2階・土砂が流れ込まない方向の部屋への垂直避難が必要ですが、平屋だと逃げ場がなくなることはデメリットです。

平屋に暮らす前には、最新のハザードマップなどをチェックし、浸水リスクを把握することが大切です。

過去に何回も浸水被害が出ているエリアであれば、平屋を購入するのはおすすめできません。

過去に浸水被害が発生していない高台などは、平屋であっても浸水リスクが比較的少ないといえます。

台風の浸水は毎年ニュースになっているから心配

低い土地・川の近くの土地などは、要注意だワン!

老後をマンションで暮らす場合のメリット・デメリット

一戸建ての平屋と似た間取りの住宅として、マンションが挙げられます。

マンションも平屋と同様にワンフロアで暮らせることがメリットですが、平屋とは違うメリット・デメリットもあります。

マンションのメリット①集合住宅ならではの安心感

平屋ではなくマンションで老後の生活を送る場合、充実したセキュリティ体制があり、安心できることがメリットです。

マンションには防犯カメラ・オートロック・モニター付きインターホンなど、さまざまな充実したセキュリティ設備が備え付けられています。

そのため、高齢者の一人暮らしでも、比較的安全に暮らせることが特徴です。

また、一戸建ての平屋と違い、多くの方が暮らす集合住宅であることから、近くに誰かがいるという安心感もあります。

子どもや親戚が近くにいない高齢者であれば、気軽におしゃべりできるご近所さんの存在は心強いでしょう。

マンションのメリット②玄関まわりに段差がない

築年数の浅い新しいマンションの場合、玄関まわりに段差がないことがメリットです。

平屋でもマンションでも同じだと思われるかもしれませんが、平屋だと玄関ドアの前に2~3段ほどのステップが設けられていることがあります。

マンションであれば、車椅子でも入れるようにスロープが設置されていますが、平屋だと段差を乗り越えなければならないかもしれません。

平屋の室内はバリアフリー化されていても、玄関前の段差には注意が必要です。

マンションのメリット③利便性の高い立地

一戸建ての平屋は駅から離れたエリアに建てられることがほとんどである一方、マンションは利便性の高い駅の近くなどに建てられることが多いことがメリットです。

広々とした平屋に住みたいと思われるかもしれませんが、通院・買い物などの利便性を考えると、駅の近くのマンションのほうが暮らしやすいでしょう。

現在は車・自転車などで駅まで出かけられるとしても、後期高齢者になるとバスなどに頼る生活が予想されます。

マンションのメリット④屋根の雪おろしが不要

毎年冬になると、地域によっては屋根の雪おろしで苦労することがあります。

こうした積雪が多い地域であっても、マンションであれば、雪おろしが不要になることがメリットです。

寒冷地のマンションだと、雪の重みに耐えられるよう建物が設計されています。

そのため、入居者が苦労して屋根の雪おろしをおこなう必要はありません。

ただし、マンションの駐車場や道路など、敷地内に積もった雪については、入居者が協力して雪かきをおこなう必要があります。

管理人が常駐しているマンションならば雪かきをしてもらえると思われるかもしれませんが、ほどんどの管理委託契約において管理人に雪かきの対応は含まれていません。

マンションのデメリット①管理費・修繕積立金がかかる

分譲マンションを購入する場合、最大で35年間にわたる住宅ローンの返済が必要です。

老後の住まいとして分譲マンションをお考えならば、この住宅ローン完済後にも毎月数万円ほどの費用がかかることがデメリットといえます。

分譲マンションで毎月かかるのは、管理費・修繕積立金などです。

このなかの管理費とは、マンションの共用部を維持管理するための費用となります。

具体的には、管理人や清掃スタッフの人件費・電球の交換費用・そのほかの設備のメンテナンス費用が含まれます。

また、修繕積立金とは、15~20年ほどおきにおこなわれる、マンション全体の大規模修繕工事のために住民が積み立てるお金です。

日常的な管理ではなく、外壁の塗り替え・屋上の防水工事・エレベーター・配管などが、大規模修繕工事となります。

管理費・修繕積立金ともに、住戸の広さによって、毎月支払う金額に差があります。

一般的なマンションであれば、管理費として毎月1万円、修繕積立金として2万円ほどが必要です。

ただし、修繕積立金の金額は、築年数が古いほど高くなる傾向があります。

マンションのデメリット②ペットと暮らせない場合がある

持ち家のマンションであっても、ペットと暮らせない場合があることは、デメリットです。

分譲マンションでペットを飼えるかどうかは、マンションの管理規約などで定められています。

自分の購入したマンションならばペットは自由に飼えると思い込まずに、マンション購入前にはペットについてのルールをチェックしましょう。

マンションのデメリット③自由にリフォームできない場合がある

ペットの飼育と同様に、マンションの管理規約ではリフォームについてのルールが定められています。

具体的には、床材の張り替えを希望している場合、マンションの管理規約において、使える床材に制限をもうけているか確認することが大切です。

一定の遮音性がある床材でなければ、リフォームが認められないかもしれません。

マンションのデメリット④騒音トラブルが起きやすい

マンションは集合住宅であることから、上の階や隣の住戸からの騒音が気になることがデメリットです。

鉄筋コンクリート造のマンションは、木造アパートなどと比較して、騒音トラブルが起きにくいと考えられます。

しかし、壁の厚みや近隣住戸の家族構成などにより、騒音が大きくなる可能性には注意しましょう。

私は、マンションのほうが安心できるわ

賃貸物件と違って気軽に引っ越せないから、ご近所さんと上手く付き合うことがポイントワン!

まとめ

後期高齢者が暮らしやすい間取りは、寝室・居場所が隣り合っているものです。

また、2階建て住宅より、一戸建ての平屋・マンションなどワンフロアで生活できる不動産は、老後の生活におすすめできます。

平屋・マンションそれぞれのメリット・デメリットをチェックして、自分と家族が年齢を重ねても暮らしやすい間取りを考えてみましょう。

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