一般的に、高齢になると賃貸物件の契約を断られやすいと耳にすることがあります。
しかし、実際に契約を断られたケースを見たわけではなく、不安だけが残るのが現実です。
そこで今回は、内閣府による調査結果を見ながら、将来の暮らしやすさを考えてみます。
令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果①住宅の状況
今回ご紹介するのは、前回の記事と同様に、内閣府が令和5年度に実施した調査の結果です。
まずは、どのような調査がおこなわれたのか、調査の概要を見てみましょう。
(出典 https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/r05/html/chapter2_3.html)
調査概要
この調査は、全国に住む65歳以上の高齢者、4,000人を対象にしておこなわれたものです。
対面ではなく、郵送・オンラインで回答を集めています。
有効回収率は66.9%
調査は、以下の12項目でおこなわれています。
- 現在の住居形態
- 65歳以降に入居を断られた経験の有無
- 入居を断られた理由
- 現在の住居の問題点
- 地震などの災害に備えてとっている対策
- 身体が虚弱化してきたら住宅の改修をどうするか
- 身体機能が低下しても住み続ける場合の改修
- 住まいや地域の環境について重視すること
- 子と同居や近居の意向
- 同居・近居する場合のメリット
- 血縁関係のない人が住む住居をどう思うか
- 自分が亡くなった後、住まいをどうするか
調査結果①現在の住居形態
- 一戸建ての持ち家 76.2%
- マンションなどの持ち家 8.3%
- 民営の賃貸物件 5.9%
- 公営・公社・URなどの賃貸物件 4.5%
- 一戸建ての賃貸物件 2.4%
- 高齢者向け住宅 0.4%
※結婚歴のない方は一戸建ての持ち家率が低く、マンションの持ち家・賃貸物件率が高い傾向がある
※離婚経験者は一戸建ての持ち家率が低く、賃貸物件率が高い傾向がある
マンションに暮らす高齢者は少ないのね
子どもがいる場合が多く、子育てしやすい一戸建てが根強い人気だワン!
調査結果②65歳以降に入居を断られた経験の有無
- ある 1.5%
- ない 81.3%
- 不明・無回答 17.3%
※離婚経験者は、経験がある率が高い(6.8%)
※1か月の平均収入が5万円未満の世帯は、経験がある率が高い(7.4%)
調査結果③入居を断られた理由
- 高齢のため 61.5%
- 万が一の場合の身元引受人がいないため 28.2%
- 家賃滞納に備えた連帯保証人がいないため 20.5%
- その他 25.6%
断られた人は意外と少ないのね
一般的な賃貸物件だと、年金収入で家賃を支払えるか、子どもが身元引受人になってくれるかが、ポイントになるワン!
調査結果④現在の住居の問題点
- 何も問題を感じない 29.9%
- 住まいの古さ・傷み 29.5%
- 地震・風水害・火災・犯罪の不安 24.4%
- 断熱性・省エネ性の低さ 16.9%
- 家賃・税金・維持費などの経済的負担 12.7%
- 住宅が広すぎる 10.4%
- 台所・トイレ・浴室の使いにくさ 9.7%
- 部屋数が多すぎる 9.5%
- 住宅が狭い 6%
- 近隣からの騒音・自宅からの騒音 5.6%
- 日当たり・風とおしの悪さ 5.5%
- 部屋数の少なさ 5%
- 転居をせまられる心配 1.4%
- プライバシーが保てない 1.2%
※80~84歳は階段・段差が使いにくいと感じる一方で、85歳以上は何も問題を感じない傾向がある
※離婚経験者は、経済的な負担の重さを問題にしている(23.0%)
※九州地区では、災害・防犯の不安を問題にしている方が多い(29.1%)
何も問題を感じていない人が多いのは意外だわ
平均収入が40万円以上だと問題を感じない傾向があるワン!こまめに修繕・リフォームしている可能性もあるワン!
調査結果⑤地震などの災害に備えてとっている対策
- 避難場所を決めている 44.8%
- 危険性についての情報(ハザードマップなど) 36.8%
- 非常食・避難用品の準備 34.3%
- 家族・親族との連絡方法を決める 26%
- 防災訓練への参加 19.2%
- 地震火災を防ぐ感震ブレーカーの導入 13.1%
- 家族以外の頼れる人との連絡方法を決める 5.6%
- 専門家による住宅性能チェック 5.4%
- とくに何もしていない 21.3%%
※男性65~69歳で、とくに何もしていないが多い(28.2%)
※85歳以上は、とくに何もしていないが多い(28%)
※結婚歴がない・離婚経験者は、とくに何もしていないが多い(34.1%、30.9%)
※大都市では、非常食・避難用品の準備をしている方が多い(40.6%)
高齢者でも、ちゃんと準備している方が3~4割くらいいるのね
逆にいえば、6~7割は、準備できていないワン!
調査結果⑥身体が虚弱化してきたら住宅の改修をどうするか
- 改修せずそのまま住み続ける 44.5%
- 有料老人ホームなどの施設に移り住む 21%
- 自宅を改修する 15.7%
- 元気なうちに改修している 8.3%
- サービス付き高齢者向け住宅などに移り住む 8.1%
- 子どもなどに同居してもらいサポートを受ける 6.3%
- 子どもの家に移り住む 3.8%
※自宅を改修する意思のある方は、年代が高くなるほど少なくなる
※結婚経験のない方・離婚経験のある方は、老人ホームなどの施設への入居を希望する方が多い
※1か月の平均年収が30万円以上だと自宅を改修する方が多く、60万円以上になると有料老人ホームへの入居を希望する方が多い
お金があれば選択肢が多いけど、子どもに頼るのも悪いわ
お正月など家族が集まるときに、どうしたいか軽く話してみると良いワン!
調査結果⑦身体機能が低下しても住み続ける場合の改修
- 手すりを設置 69.1%
- 段差解消 42.5%
- 立ち上がりやすいベッドの導入 37.7%
- 浴室・トイレの暖房導入 35.4%
- 緊急通報装置などの設置 30.7%
- 水回りの交換 20.8%
- 住宅と道路までの段差をなくす 20.1%
- 耐震補強・防火対策 18.4%
- 扱いやすい引き戸への交換 15.1%
- 滑りにくい床への交換 15%
- 和式トイレから洋室トイレへのリフォーム 12.5%
- 寝室の近くにトイレを移動するなど間取り変更 12%
- 通路の幅を広げる 5.5%
年齢とともに色々なものが必要になるのよ
段差や床で転んで骨折すると、そのまま寝たきりになるリスクがあるワン!
調査結果⑧住まいや地域の環境について重視すること
- 医療・介護の受けやすさ 61.4%
- 駅の近さ・買い物のしやすさ 54.1%
- 手すり・段差解消 41.4%
- 近くの道路の歩きやすさ 33.3%
- 災害・防犯のための設備 32.7%
- 豊かな自然・静かさ 30.9%
- プライバシーの確保 27.3%
- 子どもや孫と一緒に住む・近くに住む 20.7%
- 友人・知人の近くに住む 19.9%
- 省エネ 18.6%
- 部屋の広さ・間取り・デザイン 18.4%
- 趣味・レジャーを楽しめる場所 17.3%
- ペットとの生活 10.4%
- 職場への近さ 4.6%
※医療・介護の受けやすさは、男性より女性のほうが高い(65%)
※年齢が高いほど、駅からの近さ・買い物のしやすさを重視しない傾向がある
水害に備えて高台に住んでいるんだけど、どこに行くにも坂道があって大変
坂道・砂利道・自転車が多い道は、要注意だワン!
調査結果⑨子と同居や近居の意向
- 同居したい・同居を続けたい 23.2%
- 近くに住みたい 32.8%
- 同居・近居どちらかがしたい 12.9%
- 同居・近居どちらもしたくない 14.1%
- 不明・無回答 16.9%
※年齢が高いほど、同居希望が強くなる傾向がある
※離婚経験者は、同居・近居どちらも希望しない傾向が強い
※配偶者・パートナーと死別した方は、同居を希望する方が多い
※1か月の平均収入が低い方は同居・近居どちらもしたくない方が多く、平均年収40万円以上の方は同居したい方が多い
一人暮らしだと不安だから、子どもと同居したいんだけど…
具合が悪い時は、仕事を休んでほしいんだけど…
年齢とともに色々なものが必要になるのよ
気軽に休める職場ならいいけど、最悪の場合、介護離職に追い込まれるワン!親子の関係性が悪くならないよう、お互いの希望に対して配慮が必要になるワン!
調査結果⑩同居・近居する場合のメリット
- 手助けが必要な場合に安心できる 88.7%
- 自立した生活が送れなくなったら世話してもらえる 43.9%
- 子ども・孫を世話できる 27.0%
- 家賃・光熱費の節約 10.6%
- 経済的な援助を受けられる 10.1%
- メリットはない 0.5%
※年齢が高いほど、自立した生活が送れなくなったら世話してもらえることをメリットと考える傾向が強い(85歳以上で7割超え)
※仕事をしている方は、子ども・孫の世話をメリットと考える傾向がある
子どもが近くにいてくれるだけで安心できるのよね
気兼ねなく相談できる子ども・親戚の存在は大きいワン!
調査結果⑪血縁関係のない人が住む住居をどう思うか(シェアハウスなど)
- 居住したことがない・今後も予定がない 59.5%
- 興味がある・今後考えたい 17.3%
- 現在居住している・今後も住み続けたい 10%
- 過去に居住したことがあり、今後は利用しない 1%
- 現在居住しているが、今後は利用しない 0.8%
※結婚の経験がない方・離婚経験者・子どものいない方は、シェアハウスなどの住宅に興味を持っている方が多い
※一人暮らしの方は、同居している方と比較して、興味を持つ方が多い
シェアハウスは考えたことがなかったけど、誰かがいるのは良いかも
それぞれに個室があり、リビング・食堂などは、みんなで共有できる住宅ワン!
調査結果⑫自分が亡くなった後、住まいをどうするか
- 子ども・配偶者・パートナーが住む 59.8%
- とくに見込みがない 10.8%
- 売却・賃貸物件として活用 9.3%
- 空き家になる 5%
- その他 8.1%
※結婚したことがない方は、空き家と回答した方が多い(11.6%)
思い出のある実家だから、子どもに受け継いでほしいんだけど…
同居しているなら住み続けてもらえるけれど、マイホームを購入していると厳しいワン!誰も住まない住宅ならば、劣化が進む前の売却がおすすめワン!
まとめ
1.5%ほどの方が、65歳以上で賃貸物件への入居を断られた経験をお持ちです。
しかし、平成13年に制定され、改正を重ねてきた高齢者の居住の安定確保に関する法律により、高齢者が安心できる住まいの確保が進められています。
賃貸物件にお住まいの方も、持ち家にお住まいの方も、安心して老後を過ごせる住まいかどうか、今一度考えてみましょう。