毎年夏になると、熱中症患者が救急搬送されたとのニュースを耳にします。
実は、熱中症に注意が必要なのは、暑くなり始めた今の時期からです。
そこで今回は、高齢者が熱中症になりやすい理由とともに、基本的な予防策・身近な対策アイテムをご紹介します。
高齢者はなぜ熱中症になりやすい?
年だから、単に体が弱っているんじゃないの?
高齢者ならではの事情をもう少し深掘りしてみると、納得できる理由があるワン!
- 体内の水分量の減少
- 内臓の機能低下
- 感覚が鈍くなる
理由①体内の水分量の減少
年齢を重ねると、水分の摂取量が少なくなり、体内に保持される水分量も減少してしまいます。
一般的な成人体内の水分量は60%、高齢者は50%とされています。
こうした体内の水分量の減少は、高齢者が熱中症にかかりやすくなる原因の1つです。
体内の水分量が減ってしまうのは、食事の量の変化・筋肉量の変化などが原因です。
高齢になると食欲がなくなり食事からとれる水分量が減るほか、飲み込む力が下がり十分な水分をとれないことがあります。
また、筋肉には体液を溜める機能がありますが、高齢になり筋肉量が減ってしまうと、体内の水分量の減少につながります。
理由②内臓の機能低下
高齢者の熱中症と密接に関係しているのが、内臓のなかでも腎臓の機能です。
腎臓には、老廃物・塩分をろ過し、尿として排出させる機能があります。
夏場に大量の汗をかき水分・塩分が失われてしまうと、腎臓で血流の低下が発生し、老廃物の排出がうまくいかなくなることがあります。
もともと腎臓の機能が低下している高齢者のなかには、塩分濃度の体内調節ができず、脱水症状におちいる方が珍しくありません。
こうした腎臓と関連のある脱水症状は、熱中症を深刻化させる一因です。
理由③感覚が鈍くなる
高齢者にとくに注意が必要なのが、のどの渇きに対する感覚が鈍くなることです。
また、気温・室温が上昇してもこれに気づかないなど、暑さに対する感覚が鈍くなることも熱中症の理由です。
年齢とともに感覚が鈍くなるだけでなく、認知能力の低下が感覚を鈍らせることがあります。
のどの渇きを感じず暑くても寒いと感じてしまうと、重度の脱水症状を引き起こすリスクがあります。
理由④持病がある
年齢を重ねると、心臓・血糖値・神経・皮膚などに持病を持つ方の割合が増えます。
こうした持病は、場合によって体温調節の異常を引き起こすことがあります。
また、持病の治療のための薬は、水分量を減らすことがあるため注意が必要です。
例として、高血圧を治療する降圧剤・心臓の薬・利尿作用のある薬は、体内の水分量を減らす可能性があります。
高齢者の熱中症ではどんな症状があらわれる?
夏場は調子が悪いけど、これって熱中症なの?
熱中症の具体的な症状をチェックしてみるワン!
- 身体がだるくて重い
- 眠れない
- 肩がこる
- 頭痛がする
- 胃腸の調子が悪い
- めまい・立ちくらみ(熱失神)
- 筋肉の硬直(塩分不足による熱けいれん)
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 倦怠感・虚脱感(力が入らない熱疲労)
- 意識障害(呼びかけに応じない)
- けいれん(ガクガクする引きつけ)
- 手足の運動障害(まっすぐ歩けない)
- 身体に触ると熱い(熱射病・重度の日射病)
昔は日射病といわれていたけれど、熱中症とは違うの?
熱中症は高温由来の障害の総称で、日射病はそのなかの1つ!
熱中症は、その症状により、主に4つに分類されるワン!
①致命的で緊急性の高い熱射病
②腹部の筋肉の痛み・塩分喪失によるけいれんが起こる熱けいれん
③全身脱力・意識混濁・心拍の限度突破で起こる熱虚脱
④口の渇きが初期症状で、発汗からの血液濃縮で心臓に負担がかかる熱疲労・熱疲はい
高齢者ができる熱中症の予防策は?
面倒な予防策は嫌だわ。普段どおりの生活で問題ないんじゃない?
年齢を重ねるとともに、少しずつ意識して変えることも必要ワン!
- のどが渇かなくても水分をとる
- 室内の温度・湿度を調節する
- 体調の変化に注意する
- 直射日光から身を守る
- 緊急連絡先を持ち歩く
熱中症予防策①のどが渇かなくても水分をとる
新聞やニュースなどでもよく耳にするのが「のどが渇いていなくても、こまめに水分をとりましょう」というフレーズです。
この水分摂取について理解はしていても、実際に適切にできている方は少ないのが現実です。
厚生労働省の高齢者のための熱中症対策リーフレットでは、1日あたりコップ6杯分、約1.2リットルが水分摂取量の目安とされています。
具体的には、1時間にコップ1杯をとる・起床後と入浴後にも水分と塩分をとることが推奨されています。
ただし、腎臓に持病がある方は、水分・塩分の摂取は「少しずつ」が基本です。
熱中症予防のために多く水分をとってしまうと、過剰摂取になりむくみがひどくなり、腎臓病が悪化するおそれがあります。
基本的には血液検査・検尿での腎臓の状態把握が必要で、日常生活のなかでは、血圧・足のむくみ・舌の乾燥などに注意してみてください。
熱中症予防策室内の温度・湿度を調整する
高齢者の熱中症の多くが、室内で起きるといわれています。
そのため、高齢者の熱中症予防のポイントとなるのが、エアコンの適切な使用です。
しかし、年金暮らしで限られた予算のなかから光熱費を支払っている方のなかには、エアコンをできるだけ使いたくないと思われる方がいらっしゃいます。
こうした不安がある方には、熱中症になるとより高額な医療費がかかることを考えていただく必要があります。
2022年の「日本災害医学会雑誌」のなかの研究発表において、興味深いものがありました。
- 2018年の年齢区分別にみた救急搬送者は、65歳以上の高齢者が45,781 人(48.1%)と最も多く、死亡者数も年々増加している。
- 日本救急医学会の調査によると、熱中症で救 急搬送され入院が必要になった者のうち半数以上がエアコンを使用していなかった。
- エアコンを使用しない理由として、経済的理由による節約、エアコンの風が苦手、エアコンの使用方法がわからない、熱中症に対して湿度の重要性や危険性を理解していないなどが報告されている。
- 2018年に九州電力は、高齢者世帯を対象に、お年寄り応援、熱中症予防の割引プランを打ち出したところ申し込みが殺到した。
(出典 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdisatmed/27/1/27_270104/_article/-char/ja/)
熱中症となった場合、電気代以上の入院治療費がかかるのはもちろんのこと、その後の健康さえ失ってしまうことになりかねません。
夏場のエアコン使用は生命維持のために欠かせないものと考えて、最低限の利用を推進しましょう。
エアコンの使用方法がわからず、適切な設定ができていない場合には、過剰に電気料金がかかる可能性があります。
一般的には室温28℃が推奨されていますが、この温度で過ごしにくいと感じたら、ためらわずに温度を下げましょう。
また、温度はそのままで風量を強くすると、冷房効率が上がり、過ごしやすくなることがあります。
扇風機・サーキュレーターがある方は、エアコンと併用するのがおすすめです。
温度を下げるより風量を上げる方が消費電力は少ないのが一般的ですので、上手に省エネを取り入れてみてください。
熱中症を予防する身近なアイテム
- 軽くて小さな水筒
- 遮光率の高い日傘
- 麻(リネン)生地の薄手の羽織りもの
アイテム①軽くて小さな水筒
喉が渇いても、荷物になるし、買い物中なら我慢しなきゃ
軽くて小さな水筒ならば、家から持っていけるワン!
出先で3~4口ほど飲み物がほしくても、我慢してしまう方が多いでしょう。
この水分補給の我慢が、熱中症につながるリスクを秘めています。
水分をとらないまま真夏の直射日光のなかを帰る場合、途中で歩けなくなってしまうことがあります。
こうした熱中症のリスクを少しでも軽減できるのが、持ち運びやすい小さな水筒です。
重い荷物が嫌な方は、計量カップ1杯程度の200mlほどのミニ水筒がおすすめです。
長さが短いもの・スリムなものなど、さまざまなタイプのものがあり、カバンやポケットにも入ります。
ホームセンターには安価なオリジナルブランドのものがあるほか、ドン・キホーテなどの量販店にもさまざまなサイズのものが売られています。
短時間の持ち歩きならば、保冷性能などにこだわらず、持ちやすくて安いものを選ぶと良いでしょう。
アイテム②遮光性の高い日傘
日傘を初めて使う方は、その日影の涼しさに驚かれるかもしれません。
これから日傘を購入する・高齢の家族に日傘をプレゼントするならば、遮光性・遮熱性にこだわるのがおすすめです。
自社検証による商品比較サイトとして有名なマイベストでは、遮熱率45%のものが体感温度を下げるとの結果を公表しています。
また、去年話題になった「ドラッグストアで買えるマイナス13.7度の日傘」は、手に取りやすいアイテムです。
去年話題のツルハドラッグで日傘商品を検索してみると、よりパワーアップしたアイテムが見つかります。
(参考 https://shop.tsuruha.co.jp/catalogsearch/result/?q=%E6%97%A5%E5%82%98)
Xの投稿では、マイナス19.7度の日傘がウエルシアに売られていたとの情報がありました。
ドラッグストアの入口近くなどには、季節ごとの一押し商品が売られています。
お近くのドラッグストアに足を運ばれる際には、日傘をチェックしてみてはいかがでしょうか。
アイテム③麻(リネン)の薄手の羽織りもの
半袖で素肌をさらすより、麻でつくられた薄手のカーディガンなどを羽織ったほうが、体感温度が下がります。
麻は綿より通気性・吸水性にすぐれていて、綿よりもさらりとした手触りが魅力です。
素肌に貼りついたり重さを感じるたりすることがないため、真夏でも快適に過ごせます。
日傘とともに麻の羽織りものがあれば、外歩きが楽になるでしょう。
アイテム選びの注意点は?
テレビやラジオで知ったものは、興味があるわ
危険な使い方をチェックしておくことが大切ワン!
手に持てる小型扇風機
高齢者の場合、コンクリートの道路に扇風機をうっかり落としてしまうことがあります。
扇風機には小型のバッテリーが内蔵されていて、落下の衝撃で故障しやすいことが注意点です。
とくに注意が必要なのが、落下後に使用できても、爆発する危険があることです。
クールネックリング
クールネックリングは凍らせて首に装着するだけで、涼しくなれるおすすめのアイテムです。
しかし、皮膚感覚が低下している高齢者の場合、凍傷リスクがあることが注意点です。
クールネックリング自体は、18~28度ほどで凍結するため、適切な利用で凍傷になることはありません。
しかし、クールネックリングを冷やし過ぎてしまうと、凍傷のリスクがあります。
また、クールネックリングを付けたまま横になると、首を傷めたり呼吸ができなくなったりする可能性があります。
クールネックリングをご使用の場合は、冷凍庫で冷やし過ぎないこと・起きている時だけ使うなど、安全に注意しましょう。
まとめ
高齢者は、体内の水分量減少・内臓の働きと感覚機能の低下などにより、熱中症になりやすくなります。
水分補給と温度調節が基本的な予防策で、とくに適切なエアコンの使用が熱中症対策のポイントです。
小さな水筒・遮光性の高い日傘など、自分にとって使いやすいアイテムを導入し、熱中症に負けない生活を考えてみてください。