1人で暮らしている高齢者は、とくに熱中症に対する警戒が必要です。
熱中症にならないための予防策とともに、実際に倒れたらどうなるか知っておくことも大切です。
そこで今回は、実際の経験をもとに、一人暮らしの高齢者が熱中症で倒れた場合、どのようなことが起こるかを解説します。
一人暮らしの高齢者だけでなく、一人暮らしが不安な方・親や親戚が一人で暮らしている方の参考にしていただけたら幸いです。
※具体的に起きたことは、以下のとおりです。プライバシーに配慮し、一部変えた部分はありますが、起こったことはそのままです。
- 賃貸物件の管理会社から新聞が溜まっているとの連絡がある
- 現地に急行し、警察・救急車を呼ぶ
- 意識があることを確認するものの、孫の記憶がなくなっている
- 数日のうちにエアコンを取り付け、孫の記憶が戻る
- 地域包括支援センターからコンタクトがあり、介護保険の利用を検討する
- 介護保険利用のため、物忘れ・認知症専門クリニックを受診
- 本人の希望により、現時点では介護保険は利用しないこととする
- 地域包括支援センターの存在
- 高齢者の家を回ってくれる地域ボランティアの存在
- 熱中症で記憶障害が残ること
- 公営住宅の多くはエアコンが設置されていないこと
倒れた祖父はどんな生活をしていた?
近くに住む85歳の祖父が、去年自宅で熱中症になりました。
初めての経験・初めて知ったことなどが多く、何の準備もできていなかったことに気がつきました。
- 関東地方の街中に住む
- 公営住宅に一人暮らし
- エアコンなし
- 年金額が5万円ほど
父親の死亡・母と祖父との折り合いの悪さなど、家庭の事情により、孫の私とは10年以上疎遠になっていました。
公営住宅の保証人になったときも、顔を合わせることはありませんでした。
①賃貸物件の管理会社からの電話
「○○さんのお孫さんでしょうか。近隣住民から新聞が溜まっていて応答がないとの連絡がありました。様子を見にいってください」
連絡があったのは、公営住宅の貸主である住宅供給公社の担当者からでした。
そこで伝えられたのは、以下の3点です。
- 住宅供給公社は様子を見にいけない
- 現地で警察に立ち会ってもらい鍵を開けたほうが良い
- 結果を教えてほしい
5月末の真夏日で、熱中症かもしれないと思いました。
高齢だったため、ついに来たかという気持ちもありました。
②現地に到着・警察に通報
現地に到着し玄関を見ると、住宅供給公社の担当者に伝えられたとおり、新聞が大量に溜まっていました。
玄関のチャイムを鳴らしても応答がなく、窓・ベランダなどがすべて施錠された状態でした。
祖父の家の鍵を持っていなかったため、110番通報し、室内の確認をしてもらうようお願いしました。
そこで伝えられたのは、以下の2点です。
- 鍵がなければ、ベランダの窓を破ることになるが、修理費用を払う必要がある
- パトカーとともに救急車も向かわせる
そして、電話をつないだまま玄関ドアが開いていないか尋ねられました。
現地に到着したときチャイムは鳴らしましたが、玄関ドアが開くかどうか試してはいませんでした。
実際にドアノブを回すと、鍵はかかっていませんでした。
1人では怖くてなかにはいれなかったため、そのまま警察の到着を待つことになります。
1~2分ほどですぐ到着したことを覚えています。
警察が先に到着し、その少し後に救急車も到着しました。
ドアが開く瞬間は、とても怖かったです。
③生存確認
警察の方が先に室内に入り、横たわった祖父が動くのが見えました。
救急車が到着し、救急隊員が状況を確認します。
室内にエアコンがなく、全裸で寝ていた様子です。
警察間が窓を開け風通しを良くし、救急隊猫が意識の確認と洋服を着せてくれました。
「意識はありますが、救急搬送しますか?」
そう聞かれたので、立てる状態ならば救急搬送は不要と答えました。
救急隊隊員が祖父を立たせられたため、救急搬送はしませんでした。
「お祖父ちゃん、わかる?孫の○○だよ!」
そう呼びかけましたが、何のことかわからない様子でした。
その後、私は、警察から祖父の生年月日・電話番号など聴取を受け、警察・救急車は帰っていきました。
現地に着いてドアが開くとわかってから、1人ではとても室内に入る勇気がありませんでした。
祖父が動いているのを見た瞬間、とても安心したのを覚えています。
④熱中症の後遺症?記憶の混濁・記憶力の低下
警察・救急車が帰った後、改めて祖父と2人で話をしようとしました。
「孫の○○だよ、わかる?」
回答はなく、険しい顔で考え込んでいる様子です。
「いや、暑いから寝てたんだけどね」
「そっか、とりあえず安心したよ。私のことわかる?」
会話はできるものの、私のことが誰だかわからない様子でした。
「水分はとってる?ご飯は?」
「そこらへんにチョコレートがあるから、それを食べてる」
冷蔵庫を開けると、飲み物・食べ物はたくさんありましたが、賞味期限が切れているものが多かったです。
祖父の家のすぐ近くにはスーパーマーケット・コンビニエンスストアがあるため、急いで牛乳・ポカリスエットなどを買いにいきました。
元気が出るよううなぎの手太巻き寿司も買い、手軽に食べられるパン・アイスも買いました。
うなぎの太巻き寿司を食べて「美味しい」と言ってくれて、本当に安心しました。
私の記憶がなくなってしまったのは、熱中症の後遺症だと思いました。
エアコンなしの熱い室内にいたため、脳にダメージがあったのだと思います。
⑤エアコンの取り付け
5月末で真夏日だったことから、今後も同じように熱中症で倒れることが1番の不安でした。
「私がお金を出すから、エアコンを取り付けても良い?」
「良いけどさ、エアコンなんて使ったことないよ。贅沢だねえ」
自分が住んでいない公営住宅のエアコン取り付けは、以下のように進めました。
- 住宅供給公社にエアコン設置して良いか確認→設備の管理会社に相談するよう指示がある
- 設備の管理会社に電話→設置は問題ない
- エアコンをネットで注文、最短翌日取り付けのところを選ぶ
- ネットで注文後、エリアの施工業者から電話がある→おおよその取り付け日時がわかる
- 2日後くらいにネットで注文したエアコンを持って施工業者が来る→取り付け完了
ネット注文した時点では、エアコンが先に届き、取り付けまで保管する可能性がありました。
耳が遠く玄関のチャイムに応答してくれないため、エアコンの受け取りが不安でした。
実際には、エアコンが先に届くことはなく、施工業者の工事に私が立ち会い問題はありませんでした。
また、エアコン購入者と取り付け先の住所が違うため、取り付け業者に念を押しました。
⑥エアコン取り付けから数日後
熱中症で警察・救急車を呼んでからエアコン取り付けまでは、毎日様子を見に祖父の家を訪れていました。
甘いものが好きだとわかったので、菓子パン・チョコレート菓子・甘い飲み物などを買っていくことが多かったです。
この間、毎日、以下のような会話がありました。
「私が誰かわかる?」
「(難しい顔をして考え込む)知らない人なのに、親切だねえ」
「孫の○○だよ」
「いろいろ良くしてくれる人はいるけれど、エアコンを付けてくれる人はいなかった」
体調は問題なさそうでしたが、記憶は戻りません。
熱中症の後遺症で記憶障害になっただけでなく、長い期間疎遠だったから仕方ないと思いました。
私のことはわからなくても、会話ができるし良いじゃないかと気持ちを切り替えたことを覚えています。
⑦記憶が戻る
熱中症で倒れてから1週間ほど経った頃、2~3日に1回のペースに落として祖父宅に通っていたところ、祖父が1枚の名刺を渡してくれました。
「これ、渡してって」
その名刺には「地域包括支援センター」の文字がありました。
そして、その名刺の空白部分には「お孫さんとお話したいです」とのメモ書きがありました。
このとき、祖父が私のことを思い出してくれたことがわかりました。
「何だか、寝てたら急に救急隊員が来てさ、大丈夫ですかなんて言うんだよ」
熱中症で倒れたときの記憶はあいまいでしたが、私のことを思い出してくれたことが嬉しかったです。
熱中症から1年経った今でも、私が救急車を呼んだと言っても、それだけは理解しにくいようで、勝手に来たと思っているようです。
⑧地域包括支援センターとのやり取り
名刺を持ち帰り、地域包括支援センターについてネットで調べたところ、地域の介護などの相談に乗ってくれることがわかりました。
名刺の連絡先に電話をすると、翌日祖父の家で話し合いの場を持つことになりました。
地域包括支援センターの方の話で、祖父の家を定期的に訪れているボランティアの方がいて、その方が祖父の呂律がおかしいとのことで、市役所に連絡してくれていたことがわかりました。
市役所が地域包括支援センターに連絡し、何度か様子を見にきてくれたようです。
最初は孫の話はなかったものの、ある日突然エアコンが設置され、女性の文字で操作方法が書かれた紙があったため、驚いたとのことです。
そして、祖父から孫がやってくれたとの話を聞き、名刺にメッセージを残したとおっしゃっていました。
地域ボランティアの方にはまだ会ったことはないのですが、今でも定期的に訪れてくれるそうです。
パン・牛乳を持ってきてくれたりするとのことで、いつかお礼を言いたいです。
⑨物忘れ・認知症専門のクリニックへ
地域包括支援センターの方と話した結果、介護保険を利用して、何らかのサポートを受けたほうが良いとのアドバイスをもらいました。
短時間家事をしてくれるサービスのほか、話し好きなので友達ができるような施設にかようのも良いとのことでした。
介護保険の利用には、医者の診断書がいるとのことで、まずは物忘れ・認知症専門のクリニックへの受診が必要です。
私のことを思い出せなくなっていたことも不安だったため、すぐに予約をして診察を受けました。
認知症の検査・血液検査・MRIなどを受けましたが、結果はすべて正常でした。
血液検査でもとくに以上がなく、私より健康といっても良いかもしれません。
診察後に祖父と改めて話した結果、介護保険でのサポートや施設の利用はしたくないとのことでした。
私が見守りを続けられることから、地域包括支援センターへ連絡し、感謝とともに介護保険の利用は見送る旨を伝えました。
以上が、熱中症で倒れてから落ち着くまでの一連の流れです。
今では、1~2週間に1度、好物のサンドイッチなどを持って遊びにいったり、祖父の好きな美術展に一緒にいったりしています。
親戚のなかでも私と似ていて、気が合う友達のような存在です。
年金の少なさと、長生きするほど減ってしまう貯金が心配ですが、経済的にも支えて楽しいことをしながら長生きしてほしいと思います。
まとめ
実際に高齢者が熱中症で倒れてからどのような流れで支援がおこなわれるのかは、地域によってさまざまでしょう。
1つの例として、今回ご紹介したできごとを参考にしていただけると幸いです。
これから暑くなりますが、熱中症に気をつけてくださいね!